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強迫性障害(強迫症)

強迫性障害とは

強迫性障害強迫性障害は、自分の意思に反して「手が汚れているかもしれない」「鍵が閉まっていないのではないか」などの強い不安が頭から離れなくなる「強迫観念」と、それを打ち消すために同じ行動を何度も繰り返してしまう「強迫行為」が特徴です。このような症状は日常生活のさまざまな場面で支障をきたし、場合によっては強迫行為が過剰になり周囲の人々にも影響を与えてしまうこともあります。

強迫性障害の症状

強迫観念

強迫観念とは、本人が「おかしい」「不合理だ」と分かっていても、頭から離れない不安や恐怖のことです。この不安は繰り返し現れ、心の中で「どうにかしなければ」という思いを引き起こします。強迫観念の例としては以下のようなものがあります。

  • 自分以外の物が全て汚れているように感じ、汚染に対する恐怖が強い
  • 外出中に「家の鍵を閉め忘れたかもしれない」と不安がつきまとい、集中できない
  • 実際には誰にも危害を加えていないのに、他人に迷惑をかけた、傷つけたと思い込んでしまう
  • 車を運転中、誰かを轢いてしまったのではないかと不安に駆られる
  • 特定の数字やラッキーナンバーでないと悪いことが起こるのではと心配になる

強迫行為

強迫行為とは、強迫観念を打ち消すために繰り返される行動や儀式的な動作です。強迫行為は強迫観念を和らげるための一時的な対処法ですが、繰り返すうちに制御が効かなくなり、日常生活に支障をきたすようになります。代表的な強迫行為には以下のようなものがあります。

  • 手や身体を「汚れた」と感じるたびに洗浄や消毒を繰り返す
  • ガスや電気を消しているか、外出前に何度も確認してしまう
  • 鍵が閉まっているかを確認するために、何度も家に戻ってしまう
  • 同じニュースや情報を何度もインターネットやテレビで確認する
  • 車を運転中、「誰かを轢いていないか」と不安になり、何度も通った道を戻って確認する
  • ラッキーナンバーでないと安心できず、その数字を揃えないと行動に移せない

強迫性障害の原因

真面目で几帳面、あるいは責任感が強い性格の方や、細かいことにこだわる傾向のある人は、強迫性障害を発症しやすいと考えられています。
また遺伝的な素因や、周囲の期待や責任感から過度にプレッシャーやストレスを感じているなどの環境的な要因も影響して発症に至ることもあります。

強迫性障害を
気にしないために

強迫性障害を気にしないために強迫性障害の症状を緩和するためには、「強迫観念に対して過度に反応しないこと」が重要です。不安や恐怖を完全に消そうとすればするほど、かえってそれが気になり、頭の中が強迫観念でいっぱいになってしまうことがあります。強迫観念が浮かんでも、それに対して「考えないようにしよう」とせず、自然にやり過ごすことが大切です。また、別の活動に気を向ける、運動をして気分転換を図るなどの方法も効果的です。

強迫性障害の治療方法

強迫性障害は、適切な治療を受けることで症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。以下のような治療方法が一般的です。

1. 薬物療法

強迫性障害には、抗うつ薬の一種である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」が用いられることが多いです。SSRIは脳内のセロトニン量を増やし、不安感を軽減する効果があります。場合によっては抗不安薬が併用されることもあります。

2. 認知行動療法(CBT)

認知行動療法は強迫性障害に対する効果的な治療法として広く採用されています。この療法では、まず患者が抱く強迫観念の根本的な原因を理解し、それが不合理であることに気づくための「認知の再構築」を行います。その上で、強迫行為を徐々に減らすために、あえて原因を暴露し、それに対して反応することを我慢(反応妨害)します。これを暴露反応妨害法といいます。
具体的には、例えば「手が汚れている」という強迫観念に対しては、汚いと自分が思い込んでいるものに触れた後、手を洗いたくなるのを我慢して、不安が和らぐまで待つという訓練を繰り返します。こうして強迫行為をしなくても問題が生じないことを体感し、強迫行動を徐々に減らしていきます。

強迫性障害の生活への影響

強迫性障害は、適切な治療を受けずに放置すると、症状が重くなることがあります。強迫観念や強迫行為が悪化すると、日常生活の多くの場面で行動が制限されたり、仕事や家庭生活に支障をきたすこともあります。しかし、治療を継続することで多くの人が症状をコントロールし、通常の生活に近づくことができます。完全に治癒することは難しいとされますが、症状を管理するスキルを身につけることで安定した状態を保つことが可能です。
強迫性障害の症状にお悩みの方は、医師による適切な診断と治療が重要です。当院でも、個別の状態に応じた治療方法をご提供しておりますので、お気軽にご相談ください。