適応障害とは
適応障害は、周囲の環境や状況に対する強いストレスが引き金となり、不安や焦燥感、落ち込みといった心の症状や、動悸やめまい、睡眠障害などの身体の症状が生じる疾患です。発症の特徴は、ストレス要因が明確である点です。たとえば、日々の残業、職場の異動、人間関係の悪化など仕事に関連したものから、進学、結婚、出産、育児といった生活の変化までストレス源は多岐に渡り、誰にでも起こり得る病気です。
適応障害の症状
適応障害の症状は、大きく分けて「心の症状」「身体の症状」「行動面の症状」の三つに分類されます。
- 心の症状:気分の落ち込み、不安、強い焦燥感、絶望感 など
- 身体の症状:動悸、倦怠感、不眠、頭痛、めまい、吐き気 など
- 行動面の症状:言動がいつもと異なる、仕事や学校に行けなくなる、無断欠勤が増える
なお、症状の出方や程度は個人差があり、周囲からは軽く見られやすいため、早めに相談することが重要です。
適応障害の原因
適応障害は、特定のストレス要因が原因となって発症します。ストレスの種類や強度は人それぞれ異なり、周囲には理解されにくいこともあります。以下は、適応障害の主なストレス要因です。
- 職場でのストレス:異動、昇進、過重労働、パワハラなど
- 学校でのストレス:受験、進学、転校、いじめなど
- 家庭でのストレス:結婚、離婚、出産、育児、金銭問題など
このように日常生活の様々な出来事がストレス要因となり得るため、適応障害は誰にでも起こりうる病気です。
適応障害の治療方法
適応障害の治療には、まずストレス要因から距離を置くことが必要です。加えて、薬物療法や精神療法も症状の改善に役立ちます。
1. 休養と環境調整
適応障害の治療では、ストレス要因から離れ、心身の安定を図るための休養が大切です。また、職場や家庭環境を見直し、ストレスが減るよう調整を行います。職場であれば休職や業務の見直し、家庭では家事や育児の分担といった方法が考えられます。
2.ストレス適応のコントロール(認知行動療法)
ストレスに強くなるために、認知行動療法(CBT)や問題解決療法を行います。認知行動療法は、ストレスを生む思考のクセに気づき、考え方を修正する療法です。問題解決療法では、ストレス要因の整理を行い、解決策を見つけるためのトレーニングを行います。医師や臨床心理士のサポートのもと、より現実的な考え方を学びます。
3. 薬物療法
適応障害には、抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがあります。不安や不眠、抑うつがひどい場合には、これらの薬が一時的に使用されることがあります。ただし、ストレス要因が取り除かれると症状が改善することが多いため、薬の長期的な使用は避け、定期的に医師と相談しながら服用を進めていきます。
適応障害の治療における
セルフケア
適応障害の改善には、医師の治療に加え、患者様自身が取り組むセルフケアも大切です。以下はセルフケアの一例です。
ストレス源から離れる
ストレスを感じる環境から一時的に離れることも重要です。職場でのストレスが原因であれば、休職や転職を検討することもあります。家事や育児に対するストレスの場合は、家族に協力をお願いしたり、外部のサポートを活用したりすることも効果的です。
職場や学校に相談する
職場の上司や学校のカウンセラーに相談し、環境改善について話し合うことも一つの方法です。
業務内容の調整や、部署異動などが可能な場合もあります。
リフレッシュの時間を持つ
気分転換のために、自分の好きな趣味やリラックスできる時間を設けることが大切です。運動、読書、友人との会話など、自分が楽しめる方法でストレスを解消するのも効果的です。運動は気分転換になるだけでなく、心身の調子を整えるための副交感神経の働きを促します。
適度な活動と休養
休息は重要ですが、完全に活動を止めるのではなく、散歩や軽い運動など無理のない範囲で行うと良いでしょう。長期間の休養が必要な場合でも、リズムを崩さないよう心がけることが大切です。
生活習慣の改善
バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、ストレスに対する耐性が高まります。生活習慣の改善は、適応障害の再発予防にも効果的です。
適応障害のよくある質問
適応障害とうつ病はどのように違いますか?
適応障害とうつ病はどちらもストレスが原因ですが、うつ病はストレス要因を取り除いてもすぐには回復しない慢性的な疾患であり、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関わるとされています。一方、適応障害はストレス要因が解消されると比較的早期に症状が改善する傾向があり、ストレスとの関連がより直接的です。
適応障害は完治しますか?
適応障害は適切な治療を受ければ、ストレス要因が取り除かれた後、完治が期待できます。治療には休養や環境調整が含まれ、心身が安定するまでの時間をとることが重要です。
適応障害の予防にはどうすれば良いですか?
ストレスをため込まないことが重要です。自分の気持ちを大切にし、困難を感じた場合には周囲に相談するなど、自分に合ったストレス発散方法を取り入れましょう。
適応障害で休職した場合、どれくらいの期間休むべきですか?
症状が改善するまでの休職が推奨されます。復職の際には、段階的に勤務時間を増やしていく方法が望ましいです。