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自閉スペクトラム症(ASD)

ASD
(自閉スペクトラム症)
とは

 
ASD(自閉スペクトラム症)とはASD(自閉スペクトラム症)は発達障害の一種であり、主な特徴として対人コミュニケーションにおける困難さや、特定の物事に対する強い興味やこだわりを持つ傾向があることが挙げられます。これらの特性の現れ方や程度には個人差があり、学校や職場、家庭などさまざまな場面で影響が見られることが多いです。
ASDの特性は幼少期から見られることが多く、周囲とのコミュニケーションで違和感を感じる場合もありますが、成長とともに環境や役割が複雑になることで、特性がより顕著になり、仕事やプライベートで困難に直面するケースもあります。その結果、成人してからASDと診断される人も増えています。
また、ASDには五感の感覚に影響が現れることもあり、音や光、触覚に対する過敏さ、あるいは鈍感さが見られることもあります。ASDは、全人口のうち約1%に見られるとされ、男性に多い傾向があることも近年の研究で示されています。
ASDの症状は個人によって大きく異なりますが、適切なサポートを受けることで、日常生活や社会生活での「生きづらさ」を軽減することができます。当院では、ASDの方がより豊かな生活を送るための支援を行っています。ASDに関するご相談があれば、どうぞお気軽にお問合せください。

ASD
(自閉スペクトラム症)の
主な症状

自閉スペクトラム症(ASD)の症状は、主に「社会的コミュニケーションの困難さ」「独自のこだわりや反復的な行動」「感覚過敏」の3つの特徴が挙げられます。また、ASDの原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要素や脳の特性が関係していると考えられています。

1 .社会的
コミュニケーションの
困難さ

ASDの方は、対人関係での微妙なやり取りが苦手なことが多く、相手の表情や冗談を理解するのが難しい場合があります。以下のような特徴が見られます。

  • 言葉を額面通りに受け取ってしまう、冗談や皮肉が通じにくい
  • 相手の表情や身振りから感情を読み取るのが苦手
  • 会話の距離感が近くなりすぎることがある
  • 相手の気持ちを察するのが難しい
  • 会話のスピードやトーンが一定で、感情表現が控えめ

2. 独自のこだわりや
反復的な行動

ASDの方は、特定の物事や行動に対して強いこだわりを持ち、変化や新しい状況に対応することが難しい傾向があります。

  • 同じ習慣やルールに対する強いこだわり
  • 急な予定変更や環境の変化に対する適応が難しい
  • 1つのことに集中しすぎて周りが見えなくなる
  • 興味が偏りやすく、特定のテーマや話題に集中する
  • 柔軟な対応が苦手で、生活パターンを変えにくい

3 .感覚過敏や鈍感

ASDの方には、聴覚や触覚など五感のうち一部が過敏になったり、逆に鈍感になる場合があります。

  • 周囲の人が気にならない音(時計の針の音など)が気になる
  • クラクションの音や大きな音に驚き、パニックになることがある
  • 衣服のタグや素材の感触が不快に感じられる

ASD
(自閉スペクトラム症)の
原因について

ASDの原因は完全には解明されていませんが、主に遺伝的な要素や脳の中枢神経系の特性が関わっているとされています。ASDの方は、脳の情報処理の仕組みに独自の特性があるため、得意なことと不得意なことにばらつきが生じやすいと考えられます。このため、ASDを病気として完全に治すことは難しい側面があり、ASDは個人の特性として理解されることが重要です。
ASDの診断には、AQテスト(簡易検査)やWAIS・WISCといった知能検査やMSPA検査を用いることで、能力・特性や日常生活での困りごとをより詳しく把握することが可能です。当クリニックでも、診断や特性の理解を深めるためのこれらの検査を行っておりますので、ご相談ください。

ASD
(自閉スペクトラム症)の
診断と治療について

ASD(自閉スペクトラム症)は、発達特性として社会的なコミュニケーションの困難さや特定の行動に対する強いこだわりなどが見られる状態です。ASDそのものは「病気」というより「個々の特性」として理解されますが、適切な診断とサポートにより、生活の中での「生きづらさ」を軽減し、充実した生活を目指すことが可能です。

ASD
(自閉スペクトラム症)の
診断について

ASDの診断は、患者様の症状や生活の中で感じている困難について伺い、診断基準や検査結果をふまえて総合的に判断します。診断には以下のような要素が含まれます:

生活や社会生活の状況

患者様が直面する困難や悩みについて詳しくお伺いし、社会生活における影響を確認します。

生育歴の確認

幼少期からの様子が診断の参考となるため、学校の通知表など幼少期を振り返る資料をご持参いただくか、ご家族とご一緒に来院されるとより的確な診断が可能です。

心理検査

AQテストや知能検査(WAIS・WISCなど)、MSPA検査などを行い、患者様の特性や得意・不得意な部分を把握し、適切なサポートにつなげます。

また、成人後にASDと診断されるケースも増えており、職場での対人関係や集団生活の中で困難が生じ、うつ病や不安障害などの合併症がきっかけとなって受診する場合も多く見られます。そのため、ASDの診断においては他の精神疾患が関与していないかも慎重に検討します。

ASD
(自閉スペクトラム症)の
治療について

ASD自体には根本的な治療法がないため、治療は主にASDの特性をサポートし、環境調整や適応スキルを高めることに焦点を当てます。また、ADHDやうつ病、不安障害などを合併することがあり、これらの合併症に対する薬物療法も適切なタイミングで行います。治療のポイントは以下の通りです:

1 .環境調整

ASDの方が過ごしやすい環境を整えるための工夫が重要です。環境調整とは、ASDの特性を理解し、生活や職場での配慮を行うことで、社会生活がよりスムーズになるようサポートする方法です。

職場や学校での支援

業務や学業のスケジュール管理や、静かな作業環境を提供するなど、周囲の理解が症状の軽減に大きく役立ちます。たとえば、指示をメモで受ける、スケジュール管理ツールを使用するなどの配慮が効果的です。

家庭での環境整備

習慣を守りやすくするために物の配置を工夫したり、五感の過敏さに配慮した生活用品の選択が役立ちます。

2.心理療法とカウンセリング

認知行動療法(CBT)

社会生活や人間関係での困難に対処するためのスキルを学び、ストレスや不安の軽減に役立ちます。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

対人スキルを向上させるトレーニングで、他者の気持ちを理解したり、円滑なコミュニケーションを図る方法を学びます。

3.合併症に対する薬物療法

ASDそのものに対する治療薬はありませんが、うつ病や不安障害、ADHDなどの合併症がある場合、症状を緩和するための薬物療法を行うことがあります。これにより、過度なストレスや不安を和らげ、生活の質を向上させることが期待されます。
ASDの治療では、ASDを理解し、その特性に応じた適切な支援や環境調整が重要です。当院では、患者様と主治医・臨床心理士が信頼関係を築き、一つずつ困難を乗り越えるサポートをしています。「治療法がない」と諦めずに、一緒に生きづらさの改善と自己効力感の回復を目指していきましょう。

ASD
(自閉スペクトラム症)で
よくある質問

大人の自閉スペクトラム症(ASD)の特徴は何ですか?

AASDを持つ大人の方には以下のような特徴が見られることがあります。

  • 指示の理解が難しい:複雑な作業や曖昧な指示の理解に困難を感じることがあります。
  • 柔軟な対応が難しい:予定外の出来事にスムーズに対応できないことがあります。
  • 集中力の持続が難しい:興味が持てない分野では集中力が続かない傾向があります。

自閉症と自閉スペクトラム症の違いは何ですか?

自閉症スペクトラム症(ASD)は、「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー障害」などを含む総称です。ASDには、社会的なコミュニケーションが難しい、特定の物事に強いこだわりを持つといった共通の特徴がありますが、その程度は様々です。

  • 自閉症:言葉や知的な発達に遅れが見られ、対人関係が苦手です
  • 高機能自閉症・アスペルガー障害:知的な遅れはなく、社会生活での困難が中心です。

自閉スペクトラム症(ASD)の軽度の特徴はどのようなものですか?

軽度のASDの方は、言葉や理解力に問題は少ないものの、表情や仕草などの非言語的なコミュニケーションが苦手なことが多いです。また、話し手の意図やニュアンスを汲み取るのが難しく、言葉をそのまま受け取ってしまうため、冗談や皮肉が通じにくいことがあります。これにより、コミュニケーションでの誤解や行き違いが起こりやすいことが特徴です。

発達障害の診断のための検査はありますか?

発達障害を確定診断する特定の検査は存在しませんが、診断を補助するための心理検査を行います。当院では、一般的なスクリーニング検査(ASRSテストやSDSなど)を診察前に行い、必要に応じて身体的疾患や他の精神疾患の有無を調べる検査も行います。
さらに、詳細な知能検査であるWAIS-IV(知的能力を評価する検査)や、発達特性の程度を多面的に評価するMSPA(発達特性の程度と要支援度を測る検査)も実施可能です。これにより、個々の特性を理解し、適切なサポートに繋げていきます。

MSPA検査とはどのような検査ですか?

MSPA(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD)は、発達障害の特性を多面的に評価し、その支援の度合いを視覚的に把握できる検査です。ASDやADHDの特性を「コミュニケーション」「共感性」「感覚」「注意」「運動」などの14項目から評価し、特性チャートを作成します。このチャートにより、個々の特性や困難なポイントを視覚的に確認し、ご本人や周囲の理解を深め、適切な支援に繋げることを目的としています。

MSPA検査

WAIS検査について知りたいのですが?

WAIS-IV(ウェイス・フォー)は、知的能力(IQ)や認知機能を評価する検査です。発達障害の診断を確定するものではありませんが、得意・不得意の傾向や能力の偏りが見られる場合、ASDの傾向を判断するための補助情報として非常に有用です。検査は約2時間かかり、その結果は知的能力や特性を理解するための大きな手がかりとなり、今後の日常生活や仕事での自己理解に役立ちます。

自閉スペクトラム症(ASD)は治らない病気と聞きましたが?

ASD自体は「病気」ではなく「特性」として捉えられており、現在のところ完治させる治療法や薬物療法は存在しません。しかし、ASDの方はしばしばうつ病や不安障害、ADHDなどを合併し、それらが社会生活に大きな影響を与えることがあります。これらの合併症には薬物療法が有効です。
ASDの症状そのものに対しては、環境調整やカウンセリングが基本的な対応法です。環境調整では、本人と周囲の人々がASDの特性を理解し、生活面での工夫やサポートを行うことで、日常生活の過ごしやすさを高めます。主治医や臨床心理士とのカウンセリングを通じて、ASDに合わせたサポートを行い、家族や職場の理解を得ることも重要です。
当院では、個別の心理カウンセリングを通じて、ASDの特性を受け入れながらも困難を一つひとつ克服し、生活の質や自己効力感を高めるお手伝いをしています。